読後感:英語を禁止せよ
「英語を禁止せよ―知られざる戦時下の日本とアメリカ」 大石 五雄
昭和初期。明治維新から半世紀を越えた日本。そこは国際化を目指す社会だった。西洋文化が当然のように広まり、カフェやレストランやデパートが立ち並ぶ都会では、今と同じような消費社会が存在した。驚くことにこの時代、全国の4000もの駅の看板に英語がきちんと併記されていたという。
しかし、昭和15年から、入試科目から英語の削除、球技名の日本語化、芸人やスポーツ選手の改名と・・どんどんと敵国語を削除する作業がはじまる。英語はそこで消されてしまうのだ。その過程を調べ上げたのがこの本。
戦局が激しくなるにつれ、英語(やフランス語)が強制もしくは自主規制により削除されていく、学校名、会社名、商品名、職種名、雑誌名がどんどんと日本語におきかえられ、そして日本在住の英米人がどんどん帰国していく。「JAPAN」は「NIPPON」へ、「極東」は「大東亜」へ書き換えられていく。その過程はすさまじいものがあり、その執拗さにはある種の恐怖感さえ感じる。
今、生活のあらゆる面で世界じゅうのいろんな国が、自分たちの日常のそばにある。もちろん、自給自足や地産地消も大事だけれど、世界中で行き交う、商品や人や情報が、60数年前の時のように、ぴったりと停まることは想像したくない。
この本を風呂場で少しずつ読みながら、今の状態がいかに幸せかと感じる。そして、そのありがたみを感じないまま、ちょっとした事実で近隣国ぜんぶを責めあうような安易な風潮が気になる。
むしろ、インターネットでもつながった今の世界は、国と国という関係を飛び越え、個人と個人がつながる世界でもある。政府への批判は政府へ。私企業への批判は私企業へ。個人の発言への批判は個人へ。
何でも国レベルの話につなげることは歴史に対しても退行とも思う。事実は事実だけの非難でいいと思う。
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